経営計画の重要性

ある程度の規模になると、経営計画を1度は策定したことがある企業が多いと思いますが、その計画を社内全体に浸透させ、常に意識して目標に向かって実行していくことは大変です。

ですが、経営計画の策定を行い、その遂行に真剣に真摯に取り組む企業の多くは、順調に事業を拡大し安定した経営を維持しています。

皆様の会社は、経営計画を策定していますでしょうか?

また策定後の状況はいかがでしょうか?

経営計画とは

経営計画とは、自社のミッションやビジョンを決め、それに基づく目標等を設定し、それを実現するための行動計画です。

具体的には、①経営理念を作り、経営目標を立て、②事業環境と自社の分析を行い、経営戦略を練り、③中期計画を立て、④短年度計画を立てる、⑤計画を実行するためのアクションプランを作ることになります。

その後は、定期的に仮説と検証の繰り返し、いわゆるPDCAを回すことにより精度を高めていきます。

よく言われることですが、経営計画を策定しないまま経営をすることは、「地図を持たずに旅に出ること」、「目隠しをして運転すること」と同じです。経営者の頭の中で漠然と目標を持っていても地図がなければたどり着けませんし、そもそもどこを目指しているかも分からない状況になりかねません。

最初から緻密に策定する必要はなく、粗くても経営計画を策定しPDCAを繰り返していくことで精度が高まっていき、最終的に経営計画は会社が進むべき道を示す拠り所になっていきます。

経営計画と事業計画は違う

先日、中小企業活性化協議会にて財務DD(デューデリジェンス)の報告をしてきました。

長年、債務超過や赤字が続くなど業績の芳しくない中小企業に対し、税理士等が財務DD、中小企業診断士等が事業DDを作成し、金融機関等と共に今後の方針を相談する場になります。

財務DDは財務上の問題点の洗い出しや会社を清算した場合の価値などを検証します。

事業DDは現状の業績をベースに課題を洗い出し、今後の業績改善に向けた取り組みや事業計画の策定を行います。

一般的にはその企業が事業を継続していくことを前提とした会議になりますので、金融機関などは過去の報告である財務DDより、今後どうするかという事業DDに注目します。

今まで事業計画を策定せずに業績悪化の一途を辿ってきた経営者にとっては、その計画の実現可能性について色々質問され、なかなか辛い時間になります。

若干話が逸れてしまいましたが、事業計画はあくまで事業のみを念頭に置いて、売上や利益を出すためにはどうするか(取引先との価格交渉、コスト削減など)という計画になり、経営計画の一部といったイメージです。

経営計画を策定するメリット

これまでお会いしてきた経営者の中には、経営計画は必要ないという考えの方もいらっしゃいました。「将来のことは不透明だしあまり意味がない」「売上目標を持っていれば利益は後からついてくるから」など。

確かに何十年も経営を続けてきているわけなので、その持論も間違いではないと思うのですが、その経営者が創業者であったり、強烈なワンマン、強いリーダーシップによるトップダウン経営であれば、その方がいなくなるのと同時に会社は競争力を失います。

会社がこれから先の未来も永く存在してほしいという想いがあるならば、自分の理論や感覚を経営計画に落とし込んで、次の世代へのバトンを引き継いでほしいと思います。

次期後継者、社員への共有ができる

前述しましたが、経営者の頭の中は他の役員・社員には十分に共有されておらず、経営者の悩みのひとつです。

そこで経営者の理念や感覚、目標を含めて経営計画を体系的に策定し見える化することで全社員へ会社の方向性を共有することができます。

また策定の段階で役員や社員を巻き込むと、社員全員がその経営計画を自分事ととらえて、会社全体の結束力が高まります。

中期的な目標設定により、広い視野でやるべきことが明確になる

単年度計画だとどうしても前期比〇%増など、過去の数値を基準にして当期の目標を設定してしまいます。つまり現在の延長線上でものを見る傾向になります。

しかし、中期計画として5年後(若しくは10年後)に高い目標を設定した場合は、5年後の目標を達成するために3年後にはこうあるべき、来期はこれくらい達成しないといけないといった「未来から現在に逆算」して行動や解決策を模索する視点を持つことになります。

これはバックキャスティングの思考であり、新しい発想や飛躍的なアイディアが生まれやすいと言えます。

会社の課題がみつかりやすい

経営計画を策定する際には、必ず自社分析をする作業があり、時には業界全体や事業環境を調査したり、他社との比較をしたりします。

外部を見ることで自社の置かれた状況を理解したり、社内の環境を見直すことにより自社の強みや弱み、課題が明確になります。

それが分かれば、対策を練り行動計画を立て、実行管理していくことで改善が進みます。商品開発などであればトライ&エラーを重ねて成功につながりますし、PDCAを繰り返し行うことで業務効率化にもつながるはずです。

経営計画を達成するために

これまで、いざ経営計画を策定しても作って終わり、という会社を多く見てきました。決算時に思い出したように引っ張り出して業績部分のみピックアップして「達成しました」、「未達でした」という状況の会社様も多いのではないでしょうか。

役員や社員からすると、日々の業務、目の前の期限に追われ、経営計画を念頭に置いた数値管理など自主的に行うことはなかなか難しいと思います。

そのため、進捗管理のシステムまで作っておく必要があり、それをうまく活用すれば経営計画が蔑ろにされることはありません。

部門、チーム、個人レベルへ行動計画を落とし込む

大きい単位だと、責任の所在が不明確であり自分事に感じません。

そのため、行動計画や指標を小単位まで落とし込んで定期的な面談を行い、進捗確認やフィードバックをしていきます。

効果的な経営会議の実施

会議は経営の主要なチェックと決定の場であると参加者全員に認識してもらい、経営の内容と数字と実行状況のチェックをすることで実態を把握でき、必要であれば早期の対策を打つことができます。

また、チェックされる場があると、しない場合よりも行動へのプレッシャーが高まり、行動する確率が上がり、行動量が増します。

まとめ

経営計画を策定しても、その後の進捗管理が疎かになれば、策定しなかったこととあまり変わりません。

小単位での進捗管理と、経営会議での進捗管理が経営計画を前進させるポイントになります。

当事務所でも経営計画の策定のお手伝いと同時に、経営会議コンサル(効果的な経営会議の立案、経営会議の問題点の洗い出しや改善点)を行っておりますが、活力があり有意義な会議を運営される会社は、やはり経営計画の進捗も順調に進む傾向が強いです。

是非、経営計画の策定とその後の進捗管理をうまく行い、御社の目標を達成してほしいと思います。